海へ向かってひらけたデッキを歩く。

– かつて、ここにマリーナ構想があった –

ヨットのマストが並ぶ未来を描いていた岸壁は、
いまは静かな散歩道になっている。

係留ロープの代わりに、
ベビーカーの車輪が通り、
犬の足あとが残る。

それでも、
潮の匂いは変わらない。

水面をのぞきこめば、
ここが「港の計画地」だったことを、
海だけは覚えている。

ヨットを知る人ならわかる。
この護岸の高さ、
この水深、
この開けた空。

ここは――
ただの遊歩道ではない。

“海と暮らそうとした街”の名残りなのだ。